営業時間のおしらせ

nicolasです。
5/27(水)より
営業時間が
16時~22時(L.O 21時)
となります。

しばらくのあいだは
3名さま以上でのご来店は
お断りさせていただきます。
席数を減らしての営業になりますので
混雑状況によっては
ご入店いただけない場合があります。
ご了承ください。
テイクアウトはだいじょうぶです。

6月以降の営業時間は
またあらためてお伝えします。
申し訳ありませんがよろしくお願いします。

一人の男が飛行機から飛び降りる

バリー・ユアグロー『一人の男が飛行機から飛び降りる』を買ったのは、1996年、私はまだ19歳で、製菓の専門学校に通っていた。
学校が夏休みになり、東京から田舎へ帰省して、退屈していたんだと思う。実家で、普段はテレビ欄しか見ない新聞を読んでいて、この本の書評が載っていたのを読んだ。その書評を誰が書いていたのか、なにが書いてあったのかは忘れてしまったけれど、本のタイトルに惹きつけられて、街の大型書店にこの本を買いに行ったことは覚えている。とにかく暇だったんだと思う。
書店でこの本を買おうとして、いちばん驚いたのは、この本が2200円もすることだった。そんな本を自分の意志で買ったことは、このときまで一度もなかった。本は文庫でしか買ったことがなかった。
製菓学校や調理師学校に通うほとんどの人が思うことだと思うのだけど、「いつかは自分のお店ができたらいいな」と思ってそういう学校に通う。私もそうだった。そんな人の、ちょっと贅沢な品を買うときの自分への言い訳に「いつか自分でお店をやったときに、お店にこれを置こう」というのがある。私はそれを発動させて、『一人の男が飛行機から飛び降りる』を買った。そんな思いをして買ったくせに、しばらくはパラパラめくって眺めるだけで、ちゃんと読んでいなかった。夏休みが終わって、暇が終わったからだと思う。

2002年頃、下北沢にあったカフェ・オーディネールという店で働いていた。当時はカフェブームで、おしゃれなカフェがたくさんあって、オーディネールはそんなお店のひとつだった。オーディネールには本がたくさんあった。ここで初めて、アメリカ文学というジャンルがあること、アメリカ文学をたくさん訳している柴田元幸さんという東大の先生がいることを知った。ほかにも、ウディ・アレンの映画、ジャズ、イタリア料理、とにかくいろいろなことをここで初めて知った。この頃のカフェには、ほんとうにたくさんのことを教わった。無教養だった私は、カフェに文化を教わった。
オーディネールの本棚には、バリー・ユアグローの『セックスの哀しみ』があった。バリー・ユアグロー、あ、あの本の人だ。家に帰って、ほこりをかぶっていた『一人の男が飛行機から飛び降りる』をひっぱりだしたら、「柴田元幸【訳】」とあり、感動した。このときに、やっとちゃんとこの本を読んだ。「一人の男が飛行機から飛び降りる。」で始まる話が「スープの骨」というタイトルだったことを初めて知った。

2011年にnicolasがオープンした。本棚にたくさんの「いつか自分でお店をやったときに、お店にこれを置こう」を置いて。

2014年、ignition gallary熊谷さんによってイベントが企画され、柴田元幸さんがnicolasに来た。イベント終了後に、『一人の男が飛行機から飛び降りる』にサインを貰った。
その後、柴田さんとは、イベントで何度かご一緒させていただいたり、朗読のツアーに同行して一緒にごはんを食べたり、温泉に入ったり。

2020年、バリー・ユアグローの超短篇『旅のなごり』を包装紙にしたサンドイッチをnicolasで販売します。柴田元幸さんの手書きの翻訳原稿です。とても不思議な気持ちです。今お店はとても暇で、椅子に座って本を読んでいるとときどき常連がやってきて、ちょっとお喋りして、今日も暇だったね、と店を閉める。19歳のなにもしらない若者が憧れた「いつかやりたい喫茶店」像そのものなんだけど。ユアグローの短篇的だな、とも思います。
包装紙はすごくたくさんあります。なので、それなりに長い期間販売すると思います。売り切れたりしませんので、お時間があるときに、三軒茶屋までくる用事があるついでに、ぜひ買いにきてください。とてもいい短篇です。

バリー・ユアグロー×nicolas『旅のなごり』サンドイッチ

バリー・ユアグロー×nicolas『旅のなごり』サンドイッチ

ニューヨーク在住の作家バリー・ユアグローによる、サンドイッチが出てくる愛すべき超短篇『旅のなごり』から、三軒茶屋にあるカフェ・nicolasがサンドイッチを作りました。
そのサンドイッチを、『旅のなごり』を掲載した包装紙でラッピングして、5月10日からnicolasでテイクアウト販売します。


包装紙には、訳者・柴田元幸による手書き翻訳原稿と、イラストレーター・横山雄による絵がデザインされています。
ランチョンマットにして食べながら小説を読んでもよし、食べ終わったあとはポスターのように部屋に貼って眺めてもよし。
日々の暮らしに、サンドイッチのなごりを。

バリー・ユアグロー×nicolas『旅のなごり』サンドイッチ
価格:880円(税込)
小説:バリー・ユアグロー 訳:柴田元幸
サンドイッチ:nicolas
包装紙デザイン:横山雄(BOOTLEG)
企画:ignition gallery

nicolas
住所:東京都世田谷区太子堂4-28-10 鈴木ビル2F
営業時間:16:00-20:00 定休日:火曜・第3水曜 tel:03-6804-0425

「こんにちは、翻訳家の柴田元幸です。ignition galleryの熊谷充紘さんの呼びかけで、バリー・ユアグロー+nicolas「小説+サンドイッチ」が実現しました。
『旅のなごり』を書いたバリー・ユアグローはアメリカの作家で、奇想天外な超短篇をたくさん書いている人です。奇想天外なんだから、主人公の思うような、望むような形でお話が展開しても(まあいつもでなくても、ときどきは)いいと思うのですが、この人の場合そういうことはめったにありません。いくら奇想天外でも、現実のままならさはしっかり持ち越されている(てゆうか、むしろ増幅されている)のです。というわけで、「ままならない奇想天外」が味、の書き手なのです。
Happy eating & reading!」

『パン。オートミール入りのイングリッシュマフィン。
プロシュート。生ハムがサンドイッチの世界線をいくつかの層に分けます。
最初の層はりんご。これはあなた。
2番目の層はナス。イタリア語でナスの語源は「狂ったりんご」。
ユダヤ人の食べ物として嫌われていた歴史があります。
3番目の層はトマト。ポモドーロとは、ポム・ド・オーロ、「金のりんご」。
トマトも、ヨーロッパに伝わった当初は悪魔の実と呼ばれていました。
マスカルポーネ。栄養満点。
最後に、いつか行った旅のスーベニール、花の欠片。
どこかにはさんでおきますが、あなたはそれに気づかず
食べ終わってしまうかもしれない。』
nicolas

2020.5.1

nicolas、9周年です。

nicolasでは2016年から毎年、周年のときに小冊子を作って出しています。
「Nicome」という冊子です。
今年ももちろん出すつもりでいて、2月の時点で今回執筆していただく方たちに
原稿の依頼をしました。締め切りは3月一杯でお願いしました。
早い方は2月中に原稿が届きました。それから、いろいろあって、今です。
2月中に届いた原稿と、4月になってから届いた原稿では、
前提となっている世界が全く変わってしまったような気がしています。
今回はvol.5、5冊目です。
お店がなくなってしまったとしても、「Nicome」は出します。
なんて言うと冗談みたいですが、そんなに冗談でもないです。

来年は10周年です。
「とりあえずお店10年やれたら、そのあとぽしゃっても、まあよくがんばったよね、って言ってもらえるかね。」
なんてときどき言っていました。
もし、来年の今頃、nicolasがなかったとしても、
「Nicome vol.6 10周年記念号」は出したいと思っています。今は。
そのころにほんとにnicolasがなくなっていたら、
オレたぶんこのことを忘れちゃっている気がするので、
誰か教えてください。
2個目をやっているオレに、教えてください。

なんてね。
震災から9年。忘れないよ。
ああ、9年。なんかすごいな、9年て。

ありがとう。涙が出る。
来年のことなんてわかんないから、ちゃんと感謝を伝えておきます。
みなさん、ほんとにありがとう。

5月のお休みのおしらせ

5月のお休みは未定です。

2020.4.18

土砂降りの雨が止んだ。
新しい一万円紙幣は、原田知世にすればいいと思う。

こういうときに、うまく立ち回れない店がある。
バズらない店、行列のできない店。
SNSのフォロワーの少ない店、メディアと相性が良くない店。
時代に最適化していない店。

ずっとそういう店に憧れているし、
今も、そう、たった今も目指している。
個人的に、心の底から残って欲しい店は、
そういう店ばっかりなんだよ。
とても残念なことに。

2020.4.13

政治が、わたしたちを救う気がないことがわかった。
どうやら、わたしたちや、わたしたちより弱い人たちを救う気がない。
うすうす知っていた。だから今までアテにしてこなかった。
これからはどうするべきか、よくわからない。

暇になった店内で、高見順の「いやな感じ」という小説を読んでいる。
今の世の中のことをいろいろ考えてしまって、全然小説の世界に入っていけない。
でも、気持ちが乗ったときにちょっとずつ読んでいる。

デモじゃ生ぬるい。革命は起こせないのだろうか。
大杉栄はどこかにいないのだろうか。革命軍に入るには、どこに行けばいいですか?
官邸に火をつける前に、民衆の心に火をつけなければいけないのだけど、
抜け殻のようになってしまっているわたしたちの心に火はつくのだろうか。わからない。

それとも、やっぱりお互いに支えあうことを優先すべきなのだろうか。
飲食店だけじゃなく、映画も音楽も本も助からないと困るから、
それを必要としてくれるお客さんも助からないと困るから、
それの全部が助かるようにみんなで支えあう方法はなにかないんだろうか。わからない。

今は家で我慢、としているうちに倒れてしまう人たちは見捨ててしまうのだろうか。
文化は死ぬのだろうか。
来年の今頃、何事もなかったかのようにオリンピックに沸くのだろうか。
山のような屍を美談でラッピングして、美しい物語にされてしまうのだろうか。

そのときまで、店はあるのだろうか。わからない。

2020.4.9

同業の友人・知人の心配を毎日している。
知り合いのミュージシャンや、映画館のことを心配している。
理由ははっきりしていて、そうしていないと自分が狂うからだ。
ニュースは毎日チェックしている。
ニュースをみて、一人で失笑したあと涙が出る。
意を決して買い出しにでると、街の人たちはなんだか楽観的にみえる。いつも通りだ。
アルコールスプレーのしすぎで、手が荒れてきた。
直接顔に噴射したりもして、ちょっと酔っぱらう。
それで、少しのぼせてきて、「まさか!熱出てきたかも?」と心配になったりしている。
あほみたいだ。

こないだ店に顔を出してくれた友人は、力なく笑い、目は虚ろだった。
別の知人に電話をかけたら、店を畳むことを考えていると話してくれた。
一緒になんとか生き残ろう!と言ったあと、
感情がぐちゃぐちゃになった。

「そうは言っても二コラはだいじょうぶでしょ」
そう言ってくれる人がいる。だからそう思ってくれてる人もいるだろう。
オレとゆかさんのやせがまんの芝居を侮ってはいけない。
バレてないならこちらの思惑通りだ。

もしも、万が一のことを考えて、世話になった人や常連のお客さんに、
ひとこと感謝の言葉でも書いておこう、なんて考えてしまって、
あ、これは遺書ってやつだ、いけないいけない、と思いとどまった。

自分の店だけ生き残ろうなんてことができない。
自分の命だけ生き残ろうなんてことができない。
店を開けてもお客さんはほとんど来ない。
でも開けないと、店の家賃も家の家賃も払えなくなる。
どうする?
もし病に侵されたら、死ぬかもしれない。
死ななくても、誰かを死なせてしまうかもしれない。
誰も死ななくても、噂によって社会的に死ぬかもしれない。
そのまえにメンタルが死ぬかもしれない。

そんな葛藤の中で、焼石に水をかけ続けることを選択した
多くの飲食店のことを思う。死ぬ気で焼石に水をかけてる多くの人のことを思う。
繰り返しになるけど、そこに自分は含めない。狂ってしまうから。

お金は必要だけど、オレより必要な人が必ずいるはずだ。
そっちへ回してくれオレは自分でなんとかする。
ずっとそんなやせがまんをしてきた。

最後までバレなければいいな、と思っている。

4月のお休みのおしらせ

4月のお休みは未定です。

3月のお休みのおしらせ

3月のお休みのおしらせです。

3(火)
8(日) 21:30 close 
10(火)
17(火)
18(水)
24(火)
31(火)

3/8(土)は
<閉店後のカフェ>
のため、21:30閉店となります。

よろしくお願いいたします。