ノーアート・ノーライフ。

ナイロン100℃のお芝居「ノーアート・ノーライフ」を観劇。パリのカフェ(酒場)に集まる、うだつの上がらない芸術家気取りの男たちの物語。これは観ない訳にいかない。

「音楽も映画も芝居も、相対的な価値しか与えられようがない」「(曖昧な物差しばかりの世界で)世の中の評価と自分との間でもがき続ける」という内容のケラさんの言葉が折込のチラシで入っていて、図々しくも共感してしまう。「お客さんのニーズと、自分たちがやっていることは合致しているのか」ということ。迎合するのか、貫き通すか、のバランス。

そして劇中での、芸術家の、他の芸術家に対するリスペクトにも共感してしまう。他の分野の芸術家に敬意を抱くとき、自分の中にある芸術家気質を再認識する。「ジャンルは違えど、僕はあなたの苦悩を理解できます」という気持ち。まあこっちはそんな上等なもんじゃないのだけど。
それでも、誤解を恐れずに言えば、飲食業の人間も皆、自分のことを芸術家だと思っている。何を媒体として自己表現をし、お客様からお金を頂戴しているかの違いだけ。僕らはみんな芸術家気取りだし、そしてそうあらねばならない、そんなプライドにしがみついている。「おいしい」という、なんとも曖昧な評価を求めて。

かなり笑えて、そして、少し泣きました。

あ、あと、舞台の床。nicolasの床と一緒ですよ。で、BGMはゲンスブール。やっぱパリのカフェって言ったらこれなんだよ。うだつの上がらない芸術家気取りがくだを巻く店。ああ、そんな店になりたい。いや、むしろそんな店でくだを巻きたい。そんな店でくだを巻く芸術家気取りのダメな奴等の、なんと魅力的なことよ。